2016.8.20(土)おとバン109 美夏奈ライブレポート Vol.1

こんにちは、おとバン蔵です!

 

8/20(土)新横浜ベルズにて開催したおとバン109のライブレポートをお届けします!

今日は、美夏奈の演奏をプラスティックウエノバンドのボーカルウエノさんがレポートします。

 

ウエノさんは美夏奈バンドを結成時からずっと見てくださり、毎回レポートをお届けしてくれているのです!

2回に分けてお届けします!!

 

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『美夏奈』のオリジナル曲をガチンコで鑑賞する

~林檎の木ゆさぶりやまず~

 

暦の上では秋といえども、まだ暑くてたまらない八月二十日の夕刻、おとバンの『美夏奈』のライブを拝見した。

そして、〈歌うということ〉はどういうことあるのかと、改めて深く考えさせられた。

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突然であるが、次のような俳句がある。

 

林檎の木ゆさぶりやまず逢いたきとき

 

これは、寺山修司が十五歳の時に詠んだ句である。

読解に特に前提知識は必要ない。みなさんが思った通り「林檎の木を思わずゆさぶってしまう。

やめられず、ゆさぶり続けてしまう。あの人に逢いたくて仕方ないときには」といった意味であろう。

更に想像を膨らませて「林檎のような、あの人のおっぱいを触りたくて仕様がない」と鑑賞しても、面白い。

 

 

この句を読んで、私は一度は確かに、なんて修司は早熟なのか思った。

しかし一方で、このような気持ちは誰でも遅かれ早かれ抱くものであり、その心の叫びに、大いに共感できた。そして、誰でも共感できることを、とてもかっこよく表現できていると思った。

青春時代のよくありがちでやるせない気持ちを、わずか十七音(この句は字余りで十八音なのだが)に閉じ込めて、永遠のものにしている。私もロックンローラーとして、修司に負けないないような歌を歌いたいと思った。そして、修司というのは、やさしい男なのだろうなと思うのだ。

 

まずメンバーを紹介。

メンバー一同、夏らしい出で立ち。

 

ボーカルの美夏奈さんは夏帽子にブルーのサマードレス。

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JEHOさんはアコギを持ち、ハーモニカフォルダーを首に下げ、帽子をかぶっている。ボブ・ディランのようだ。

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エレキギターの長谷川さんは昨日まで三十九度の熱があったようだが、Tシャツに短パンである。

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ドラムの井口さんも帽子をかぶり、うっちゃんもラフな夏休みの格好だ。

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コーラスのアツコちゃんは、大人っぽい美夏奈さんと対照的に、やはり若くかわいらしい洋服である。

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今回の『美夏奈』のライブで、圧巻はやはりオリジナルの『ミュージックビデオ』という曲であった。五曲目に演奏された。その演奏を聞いて頂こう。

 

 

作詞はベースのうっちゃん

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作曲は新メンバーのJEHO(ジェホ)さん。

JEHOさんは、長谷川さん、井口さん、うっちゃんの高校時代の一年後輩で旧知の中。横浜の高校生バンドコンテストの『HOT WAVE』で決勝まで行き、横浜スタジアムのステージに立ったことがあると言う。

 

 

曲はカントリーのような曲調で始まる。

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そしてハーモニカが囃す。自然と客席から手拍子が起こる。パーティソングのように聞こえる。

が、アコギが涼し気で、それに絡むエレキがブルージーでもあり、せつなくてたまらなくなる。楽しいだけの曲ではないのだ。こういう音楽が、ロックというのだと思う。そして〈夏の夕〉といった風情を感じさせてくれる。

 

サビで美夏奈さんはこう歌った。

 

いま私 歌っている

    背中を押してくれたあなたがいたから

    支えてくれている

    笑顔でいてくれるあなたがいたから

 

まるで時が止まっているかのような歌い方であった。

歌いたいというあくまで個人的な衝動を、内省的に、個人的なラブソングとして歌っている。

そしてそれが永遠性を帯び、時間が止まるのである。井口さんのドラム、うっちゃんのベースが低音に響き、より悠久な思いを感じさせる。

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しかしながら、歌い手の気持ちがあくまで前向きなため、我々も自然に思いを共有することができる。

たまたま私の隣に、美夏奈さんのお父様が座っていらっしゃったが、うなずいて聴いていらした。JEHOさんの明るい曲調がそういったことを手助けしている。

長谷川さんのエレキはそれをブルーに染め、アツコちゃんの透明感のある高い声はより神秘性を演出する。

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そして、それらすべてを調和し、先導し、せつない一瞬を創り出し、我々に自然な形で提供するのは、美夏奈さんである。

歌手としての技量と、女性としての人間性がそうさせている。だから我々は、あたかも横浜の丘の上から、暮れなずむ夏空を見上げているような、ひと夏の経験を共にするのである。

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MCで、うっちゃんが、どんな気持ちで作詞したかを語っていた。

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美夏奈さんが昔、

「生まれ変わったら歌手になりたい」と言っていた。

それを夫の康輔さんが

「生まれ変わらなくていいよ、いまからバンドやればいいじゃん」と、

自分や長谷川さんなど昔の仲間を集めてくれた。美夏奈さんは小さい頃から歌が好きだったらしい。

自分もいまになって娘が家で歌っていたりするのを見て、なるほどと思い、その気持ちを急いで詞にしたためたと。

 

JEHOさんは、二月におとバンを初めて観て、楽しみながらも、純粋な音楽に心を打たれたらしい。

溢れる熱量に感動した。今回、先輩たちに誘われ『美夏奈』に入り、バンドを初めたころの原体験を追体験しているとのこと。

 

 

 

長谷川さんは、高校時代に初めてうっちゃんとバンドを組みライブに出た。JEHOさんと井口さんのバンド(ストリートスライダーズなどをコピーしていたとのこと)が一緒だった。楽屋で、初ライブだったので浮かれていたら、JEHOさんが独り泣いていた。どうしたのだと聞いたら、「出来が悪くて悔しくてたまらない」と言っていた。これぐらいの気持ちでないと、上に行けないのだなあと、恥ずかしく思ったと、思い出を語った。

 

アツコちゃんは、社会人になりたてで、プライベートでもこのような大人たちに囲まれて、いろんなことを知りつつあるはずである。

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みんな、林檎の木をゆさぶって、ゆさぶりやまないのである。

 

そして、そうしたやるせなくて仕方ない気持ちが出てくるというのは、やさしく前向きに生きているからである。

 

一瞬のかけがえのない気持ちを、永遠性を持った作品に閉じ込めるということが、ロックンロールである。そのためには、あくまで人間として普通に生きなければならない。それがやさしさというものだ。

 

我々は、やりようによっては、時空を超えて修司の林檎の木にたどり着くこともできる。

ましてや同時代に生きる人同士、美夏奈さんは桜井和寿と、私は桑田佳祐と同じ夏の夕空を仰ぎ、同じ気持ちを体感することが出来る。

しかし、そこに美夏奈さんと、私自身の独自な発見があれば、それは美夏奈さんと、私自身にしかない、かけがえのない永遠性を持った夏の夕空となる。

 

 

つづく・・・・・

 

 

 

 

 

 


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