人を、街を、音楽でつなぐ市民団体 NPO法人ARCSHIP 【私的音楽評】NO.228 福島セレクト2 担当:福島さん

【私的音楽評】NO.228 福島セレクト2 担当:福島さん

▶私的音楽評 福島セレクト2(1988年)

 

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創世記にはすべてのもののなりたちが記され、そこにはアダムとイブの原罪も書 かれた…
現役時代、初めてのことに取り組んだガムシャラさは失敗をもなつかしく思わせるが、
功績も罪過もあって、功罪相償っているもの事実。
ということで、前回「へービーローテーション創世記」(1987年)の続きは
「ライブ番組創世記」(1988年)。

 

今年5月2日の命日に発売された忌野清志郎著「ネズミに捧ぐ詩」を読んでいて
思い出したことがある。
私と同い年で、しかも同じ頃に父を亡くした88年から書かれた手記だが、
そこにはその年の「COVERS」発売中止事件に結びつく原発に関連した記述がある。
「原子力発電とやらでせっせとつくった電力で
まるで同じようなTVをやって
俺たちには飽き飽きしながらそいつを見てる」

 

ネズミに捧ぐ詩

 

RCサクセションは開局時の「ヤング・イパルス」時代の映像がセルビデオになるほど、
清志郎はtvkとともに歩んできたアーティストの一人、
いや一緒に歩かせてもらった人だ。
72年からの「ヤング・インパルス」、80年にスタートした「Fighting 80’s」が 途絶えた86年、
その流れをくむ正統派のライブ収録番組を復活させるべく、
東芝に全体の1/3枠を提供してもらって86年11月にスタートしたのが「Live TOMATO」。

 

チェルノブイリ原発事故が起こったのがこの年の4月で、
そして、88年6月にあの事件が起こった。
「Live TOMATO」はアルバムの8月発売に向けたプロモーションの一環で
順調に5/23にライブを収録し、6/2に放送している。
しかしちょうどそのころ、原発メーカーの東芝が親会社である東芝EMIは
「原子力は要らねえ」と歌う「Summertime Blues」などの4曲をよしとせず、
石坂敬一統括本部長(当時)はアルバムから外すことを求めていた。
そしてついに6/10、話し合いは決裂してしまい、
アルバム「COVERS」は発売中止に追い込まれてしまう。
そうなると番組提供社の東芝から、放送したわれわれも大目玉を食らったという 顛末。

 

Summertime Blues http://www.youtube.com/watch?v=7H2ObUdNNS4
Love Me Tender http://www.youtube.com/watch?v=UNCAd9dvmeg

 

 

 

所詮民放には、こういう広告主とのトラブルにつきまとわれる宿命がある。
だから広告主と放送局の苦労話ではなく、
アーティストとレコード会社の在り方を考えるうえで重要な事件だ。
清志郎と東芝EMI幹部との話し合いは灰皿が飛んだとも言われ、
ともに切なく、むなしいものだったことは想像に難くない。
現代社会のプロダクトであるかぎりこういう摩擦はついて回るし、
これを乗り越える力も、いまや創造力のうちなのかも知れない。
結局、この「COVERS」はRCサクセション古巣のキティレコードから
8/15に発売することができ、
なんとアルバムもシングル「ラブ・ミー・テンダー」もオリコンチャート1位を獲得した。

 

「日本の原発は安全です─ さっぱりわかんねえ 根拠がねえ
これが最後のサマータイムブルース」
そのアルバムを改めて聴いて、清志郎の慧眼に敬服しながら思った。
創世記に記された、あの善悪の知識の木からだけはとってはいけなかった「禁断 の木の実」
これこそが「原子の力」だったのだろうと。

 

次回「私的音楽評 福島セレクト3」は1989年の「地球学園祭創世記」を予定。

 

RCカバーズCD

 

 


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